【一般】
富永仲基の「楽律考」  儒教と音楽について
横田庄一郎/ 編著  印藤和寛/訳・解題
四六判 上製 331頁 (本体2800円+税) ISBN4-86085-040-4 (2006.10)
江戸期にあってすでに近代合理思想を先取りしていた天才・富永仲基が、古代中国から我が国の雅楽にいたる楽律の変遷を度量衡との関わりから研究・考証し、今日にまで通じる自由な音楽論を展開した「楽律考」。
本書は、現代語訳とともに丁寧な注釈・解説を加え、さらに仲基の考証が生まれる背景となった、音楽と政治・儒教との関わりについても概観した貴重な書である。
 

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  地球上に音楽を持たない民族はない。仲基は『楽律考』の冒頭で「凡そ人は聲なき能はず、既に聲あれば律なき能はず」と述べる。これは現代の人類学者川田順造がアフリカのフィールドワークで「『ことば』は、詩は、なによりもまず音であり、声であり、高低やリズムによって感情の籠められた人間の『いき』である」(『音・言葉・人間』岩波書店)と観察し、原始的な真理を確認したこともある。
………………………………(本文「はじめに」より)

■本書目次
はじめに
第一部 儒教と音楽について
 一、見失われた「楽」
 二、中国古代の礼楽思想
 三、音楽に於ける美と善
 四、正しい音楽とは何か
 五、儒教批判と音楽観
 六、日本的歪曲の風土
 七、礼による内外の秩序
 八、論語読みの論語知らず
 九、西洋音楽という正楽
 十、人間と音楽の営み
 《参考文献》
第二部 富永仲基「楽律考」現代語訳
 贈言
 楽律考序
 楽律考
  日本太古の楽律
  日本古代の「唐楽」楽律
  日本古代の「高麗楽」楽律
  日本現代の雅楽楽律
  中国太古の楽律
  周の楽律
  漢の楽律
  魏の楽律
  梁の法尺による楽律
  後周(北周)の玉尺による楽律
  隋の鉄尺による楽律
  隋の梁表尺による楽律
  隋の万宝常の水尺による楽律
  唐の楽律
  唐の下宮調、倍四倍五の楽律
  唐の魏延陵の楽律
  唐の殷盈孫の楽律
  周(後周)の王朴の楽律
  宋の景表尺による楽律
  宋の季照の楽律
  宋の阮逸・胡瑗の楽律
  宋のケ保信の楽律
  宋の楊傑・劉几の楽律
  宋の范鎮の楽律
  宋の大晟楽の楽律
  南宋の楽律
  宋の燕楽の楽律
  元の楽律
 音楽に関わる考察九箇条 (付)
  調について
  林鐘と黄鐘の関係について
  本朝音階の律呂の別、及び嬰商・嬰羽について
  舞曲・歌曲・解曲について
  節・拍・畳・偏・徹・換頭について
  五常楽・太平楽の楽について
  周官に見える音律名について
  楽部について
  音楽の本質について
 訳注
 解題
  一、『楽律考』の発見と研究
  二、『楽律考』の背景(何のために書かれたか)
  三、『楽律考』の内容
  四、『楽律考』の評価−林謙三及び近年の研究との比較
 


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