【一般】
第九「初めて」物語
第九「初めて」物語
横田庄一郎/著
四六判 上製 300頁 (本体2600円+税) ISBN4-931284-91-4 (2002.11)
ベートーヴェンの交響曲第九番 日本における初演は――どこで、誰が?

本書はベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」の日本初演をめぐるノンフィクションである。日本で最初に「喜びの歌」が響いたのは徳島ドイツ人俘虜収容所である…から始まって第九に関する「初めて」の歴史を綿密な取材と膨大な参考文献より紐解く。

……日本人が「初めて」第四楽章の「喜びの歌」を演奏したのは九大フィルであり、場所は福岡市記念館であった。日本のオーケストラと合唱団が「初めて」第九を全曲演奏したのは、指揮者こそドイツ人であったが、東京音楽学校だったことはいうまでもない。(本文より)
 

………………………………………………………
 いまや日本の師走はベートーヴェンの第九交響曲演奏会が年中行事となったようだ。歳末の年中行事といえば、まず商店街にクリスマスの飾り付けがなされる。これはキリスト教である。二十五日のクリスマスが過ぎると、直ちに正月を迎える準備に追われる。そして大晦日は紅白歌合戦を楽しんだあと、仏教寺院の百八つの除夜の鐘によって煩悩を落とし、元旦には清々しく神社の初詣に行く。この間はまた、どこかでベートーヴェンの第九を聴くのである。これで現代の日本人にとっての八百万の神々が出そろう。これこそが日本人の旧年と新年を結ぶ聖なる一週間であり、戦後日本の歳末風景なのである。
………………………………(「前奏曲」より)


■本書目次

 前奏曲
第一章 板東俘虜収容所
  一、四国八十八カ所一番札所
  二、ひとり歩きした「初演」話
  三、収容所内の音楽活動
  四、オーケストラ演奏会
  五、一九一八年六月一日
  六、記念碑除幕式での「讃歌」
  七、指揮者ヘルマン・ハンゼン
  八、鉄条網の中の四年半
 間奏曲T 第九を聴きに来た日本人
第二章 久留米高等女学校
  一、最大規模の俘虜収容所
  二、板東を上回る音楽活動
  三、「久留米行進曲」
  四、塗り替えられる「初演」記録
  五、薙刀の稽古と水瓶ティンパニー
 間奏曲U 東京五輪でよみがえる第九の記憶
第三章 福岡市記念館
  一、九州帝国大学フィルハーモニー会
  二、精神医学とヴァイオリン
  三、アインシュタインの余韻
  四、日本人の第九合唱
  五、文部省撰御成婚奉祝歌
  六、ホルンは見ていた
 間奏曲V レコードで第九を聴いたあらえびす
第四章 東京音楽学校奏楽堂
  一、板東から上野へ
  二、束の間の幻影
  三、ライテイさんの交友録
  四、ニキッシュと日本人たち
  五、一九二四年十一月二十九日
  六、「歓喜の聲にふるえなががら」
  七、遠い響きと夢の跡
 アンコール
 巻末付表 明治、大正時代における主な交響曲演奏の記録


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