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エンジェル・オーリアリは、うら口のかいだんにすわって、考えていました。お母さんはカナダの旅行からかえってきたばかりで、今はキンボール通りにある古い緑色の家のキッチンで、鼻歌をうたっています。お母さんがかえってきてからずっと、エンジェルはお母さんのかるい足どりと、なんとなくひみつをもっているような顔つき気づいていました。ひみつは、ほかのだれにもわからない心のおくに、そっとあたためているような、いいひみつです。そうよ、お母さんたら小学生みたいな感じ、とエンジェルは思いました。
………………………………(「1 ワシントンからの手紙」より)
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