小社刊行『動物のいのちを考える』を読んでから、「動物のいのち」について考えるようになった。人間は、動物とのかかわりなしでは生きていかれないのに、動物のいのちに対して、ずいぶん身勝手だなあと思わずにはいられない内容で、衝撃が大きかった。それから、新聞や雑誌を読んでいても、動物について書かれた記事や本の紹介に目がいくようになり、そんな中で、見つけた『動物翻訳家』。読み始めると、これがとにかく面白かった。
この本は、動物の世界と人間の世界をつなぐ「翻訳家」、動物園の飼育員が主人公の、ノンフィクションだ。それぞれ担当する動物は違うが、4つの動物園の飼育員が、その動物が動物園の中で、いかに幸せに本来の姿て暮らすことができるかを考え、それを実現するために悩み、奮闘する姿が描かれている。
共通の言語を持つわけではない人間と動物。飼育員が、相手をじっくりと観察し、思いやり、その行動を尊重し、心の声を聞くことで、こんなにも分かり合えるものなんだと、それぞれのエピソードに驚き感心する。
著者も言っているが、動物園はここ10年で、目に見えて大きく変わったと思う。北海道の旭山動物園がおもしろいと頻繁にテレビで取り上げられるようになった頃から、関東近郊のさまざまな動物園も変わったように思う。
昔は、檻の中で動物がただ展示されていると感じることも多かったが、今は、窓一枚、柵一つ隔てて、動物の生活を覗き見させてもらっている気がするのだ。そこに、多くの動物園に関わる人たちと、動物のことを思う飼育員の日々の努力があることが、本書を読むとよくわかる。
動物が動物らしく暮らす為に、動物園の存在そのものに対する賛否もあると思うが、ここで紹介されてる飼育員と動物たちは、互いに信頼し合いながら幸せに暮らしている。そして、その幸せな暮らしぶりを、見に行きたいなぁと思わずにはいられない。(文:みなりん) |