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書名は中国の「不動産バブル」がテーマだといっているが、書きぶりは不動産バブルを一つの材料として現代中国の政治、社会を知るための多面的な情報に満ちている。柯隆は若いときに来日、留学した中国人だが、すでに40年近く日本にいて、中国、日本、世界の経済について発言している。著書もたくさんある。本書では、中国人エコノミストである故に書けることだと感じる部分が面白い。中国人の土地、マイホームにたいする異常に強い執着の指摘などはそれだろう。社会主義の中国では土地は私有できないので、住宅所有に異常な執着がある。中国人は賃貸ではなく、住宅所有をきわめて熱心に求める。住宅を所有してない人は、結婚対象にしてもらえないらしい。
都市再開発の手法も面白い。日本やヨーロッパでは、歴史的建造物があれば通常それらを保存しながら再開発が行われるが、中国では古い建物、建造物をそっくり取り払って、新しい都市を建設する。文化の断絶をものともせず、新しく建設するという。同じ時代に生き同じ技術を駆使しながら、建設を支える思想には大きな違いがあるという。
同じ言葉で「不動産バブル」といっても、日本と中国では内実の違いがあることが次つぎ指摘されていて、目から鱗だ。
もう一つ重要な指摘は、共産党一党独裁の政治体制は、中国経済の根本的障害物だということ。歴史的には、1978年に始まったケ小平の改革開放路線は、市場経済の導入によって経済成長を実現しようとした。ケ小平の「白猫だろうが黒猫だろうが、ネズミを捕る猫がいい猫だ」は、経済成長のために資本主義を導入した過激な政策を表明したものだが、しかし同時にケ小平は、共産党の指導体制は堅持しなければならないという立場を決して崩さないし譲らない。天安門事件の時のケ小平の立場がその何よりの証拠で、柯隆は、ケ小平のこの立場は中国共産党の不変の立場でもあり、市場経済とは両立しないので、経済も結局不調に陥るほかないと考えている。根本にこの判断があるので、柯隆の中国経済に対する見方は厳しくならざるをえない。
現代中国の経済、政治ニュースに接したときに、その意味を的確に認識するために、本書は有益な知識を与えてくれる。(文:宮)
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