|
『戦争童話集』は、野坂さんが編集者との話から戦争に関連する童話を書くことになり、「婦人公論」に1年間連載され、1975年に単行本として刊行された。1980年には中公文庫になった。そして戦後80年の今年、2編を追加した完全版(中公文庫)として刊行された。作者の野坂さんは10年前に亡くなっているので、こういう形で新たに刊行されるのには、文庫編集者の意思を感じる。
作品を童話として書くことによりリアリティを気にせず、戦争というもののさまざまな側面を読者に伝えられる内容になったようだ。野坂さんは戦場の経験はないと断っていて、確かに自身の経験としては兵士の経験はないが、同時代人として同じ空気を吸い、ひとびとの経験を取り込んで、80年後の現代人には描くことが困難な戦争の実相を描いている。忘れがたい印象を残す作品群。
繰り返し読みなおして、今年、この形で出版されたことに納得した。そして尽きない関心から黒田征太郎の絵が加わった絵本を繙くことになった。今年7月26日の毎日新聞の書評記事(池澤夏樹さん執筆)を読んで本書の存在を知った。私は野坂昭如が童話を書いていたということに興味をそそられて、手に取った。本書が世に出る経緯や黒田征太郎が熱心に働きかけて全14篇の作品が5冊の絵本になったことなど、池澤さんの記事に詳しい。私同様に関心を持たれた方は、是非、中公文庫の『戦争童話集』と池澤さんの書評記事をご覧ください。(文:宮)
|