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「この本おもしろかったよ!」
順番やペースは狂いがちですが約1ヵ月に1冊のペースで朔北社の社長である宮本と、出版部の2人のM子の総勢3人が順番にお気に入りの本を紹介。本のジャンルは自由。本を読む楽しみを共有したり、誰かの本を読むきっかけになったらいいなと思っている。

自発的対米従属 知られざる「ワシントン拡声器」

猿田佐世/著


角川新書 2017

 日米同盟と言われるが、日本は安全保障のために植民地としかいえない従属的立場に置かれていることを当たり前のこととして今日まで来た。日米は対等ではなくて、アメリカの言いなりになるしか国を守る方法がないと思わされてきた、そう思ってきた。保守系政治家と官僚は、長年慣れ親しんできたこの関係を維持することが国益に合致すると考えている。長年続いてきた関係だから、日米両政府にとって、それなりの行動様式が出来上がっている。このことに対する批判は、これまた長年の批判的研究の蓄積によって明らかになっている。この関係は両国政府と其の周辺の関係者だけの問題ではなく、こういう状態を仕方のないこととして受け入れている日本の有権者がいて、選挙を通してこの関係を持続することを良しとする政党を支持してきたから続いている。
 本書は上に述べたような今日の日米関係を継続的に維持するためにどんな行動が取られているのか、具体的に探究し、実は日米両国とも限られたルートをつうじて情報を交換していて、問題の具体的意味を把握できていないことを指摘している。例えば知日派アメリカ人と言っても数人しかいないこと、彼らの発言は実はアメリカ政府の一部の立場を表わすものでしかないことも多いのだが、その発言内容が日本の従来からの日米関係を継続するために有用と考える日本側の政治家、官僚がアメリカの対日政策だとして利用してきたという。著者はこれを「ワシントン拡声器」と呼んでいる。
 本書が出版されたとき丁度トランプが大統領に就任して、従来の関係をひっくり返すような発言を連発していた。本書の著者は、それを、日米関係を改めて考え直す絶好の機会と考えている。
 外交関係の実状をを具体的な人、組織の行動を通じて見ると初めて分かることがいろいろあり、問題を考え直すきっかけになると、本書は教えてくれる。著者自身が現状を改善するために、両国に様々な意見が存在することをきちっと伝えあって、日米双方の政策に反映させるべく活動(新外交イニシアチブ事務局長)をしている。(文:宮)

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