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「この本おもしろかったよ!」
1ヶ月に約1冊のペースで朔北社出版部の3人がお気に入りの本を紹介。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

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一緒に生きる 親子の風景

東直子/著 塩川いづみ/画

福音館書店


 「母の友」で6年間連載されていた子育てに関わるエッセイ集。東さんの子育てのこと、何気ない親子の風景、今、子育て中の人たちへ向けられた、あたたかみのある文はとても心地よかった。先人の詩や短歌から、親子のこんな風景が見えるのかという驚きや気づきもあって、手をのばす本や作家がまた広がっていきそうだ。
塩川いづみさんの挿画も、文にぴたりと寄り添い優しかった。小さな子の手の絵が愛おしくてたまらない。

わたしの拙い説明は横において、とにかく手にとって読んでほしいというのが正直な気持ちで、読み終えてまだ感情が高ぶっていたときにも、「とにかく読んでみて、すごくいいんだから」とそれだけで、同じく子育てをしてきた友人に勧めていた。ただひとつ「あの頃の自分を肯定してもらったような気持ちになるよ」と一言だけそえて。
あと数年で成人を迎えるわが子の子育ての日々、いつだって思い出すのは、嬉しかったことや楽しかったことに混じって、胸がチクっとする、ちょっとした後悔。「でも、大丈夫。」東さんにそういってもらったようで、読みながら何度も泣いてしまった。
ちゃんとやらなくちゃと、心も頭もカチコチだった私は、あの頃この本に出会っていたら…もしかすると、すんなり言葉が入ってこなかったかもしれない。
過去を思い出し、あれでよかったのか、あんなこと言っちゃったなと、今でも落ちこむし、思春期の子どもと向き合っている今も、また違うあれこれに悩んだりもする。
「この瞬間に必要なことをすれば、それでいい」
エッセイの中の東さんのこの一言が、過去のわたしと今のわたしの背中をポンポンと優しく叩いてくれたようで、すーっと気持ちを落ち着けて、また一歩。
私は、今この本に出会えてよかったと心から思っている。

すべてを読み終えて巻末の山崎ナオコーラさんとの対談。それもとてもよかった。
(文:みなりん)