本書は、著者が『はじめに』に書いているように、東京新聞に2016年から2020年まで連載した「時代を読む」を集めたものである。政治学者である著者が、書名を「民主主義を信じる」と名付けたことは、本書を読むものに強い印象を与える。あえて「信じる」と言い切ったところに著者の半端でない意思を感じる。毎月1回の連載は、その時どきの政治、社会問題をとりあげているので、時を隔てて問題を再度考えるよいきっかけを与えてくれる。
トランプ大統領の当選に始まり、その政権の終わりに至る時期をあつかっているが、その5年間は世界の民主主義にとって「危機の5年間」であったばかりでなく、日本の民主主義にとっても困難な時期であり、政治学者としての著者の思索の過程が込められている。著者は「あとがき」で、このように本書の性格を総括しているが、その言に恥じない内容であり、書名と呼応しているのだ。(文:宮) |