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「この本おもしろかったよ!」
1ヶ月に約1冊のペースで朔北社出版部の3人がお気に入りの本を紹介。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

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厄除け詩集

井伏鱒二/著

講談社文芸文庫

2014年

 なんとか気分を変えなければというときに、ふと手に取る本だ。まず、よく知られた句が浮かんできて手に取るが、拾い読みしていくといつの間にか引き込まれる。  よく知られた句とは    ハナニアラシノタトヘモアルゾ    「サヨナラ」ダケガ人生ダ この2行の前に、コノサカズキヲ受ケテクレ ドウゾナミナミツガシテオクレ、という2行がある。中国唐の詩人于武陵の「勧酒」という五言絶句の翻訳である。訳者は井伏鱒二。覚束ない漢詩の知識を駆使して原詩を見るまでもなくとても自由な訳だ。『厄除け詩集』には17首の漢詩の訳が収められているが、どれも自由奔放で面白い。一例をあげると「田家春望」(高適)を次のように訳している。    ウチヲデテミリヤアテドモナイガ    正月キブンガドコニモミエタ    トコロガ会ヒタイヒトモナク    アサガヤアタリデ大ザケノンダ 漢詩に阿佐ヶ谷が出てくるわけがないのだが‥‥。  漢詩の訳以外に自作詩も収録されていて同様に楽しめるが、この文庫が良いのは、大岡信の解説「こんこん出やれ」が読めることだ。そしてそこで触れられている佐藤春夫の『車塵集』をどうしても読みたくなるし、井伏鱒二と会津八一の訳詩の比較を読んで、日本語と日本詩の面白さを再認識させられるのである。  誌の本文は文庫で111ページのコンパクトな本で、実にいろいろな楽しみ方ができる。
(文:宮)