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「この本おもしろかったよ!」
1ヶ月に約1冊のペースで朔北社出版部の3人がお気に入りの本を紹介。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

【紹介した書籍に興味をお持ちの方へ】 この本は朔北社の出版物ではありませんので、出版状況等に関しましては、お近くの書店、あるいは各出版社にお問い合わせ下さい。

すずめのくつした

ジョージ・セルデン/文, ピーター・リップマン/絵
光吉郁子/訳

大日本図書

  大日本図書から「ゆかいなゆかないなおはなし」という海外の幼年向けの物語をシリーズが出版されている。このシリーズは1970年代にスタートし大日本図書が120周年を迎えるにあたって新装復刊したシリーズらしい。時々学校向けの展示会でぽっかりと先生達が来ない時間があり、そんなときに他社の本を手にとって読むのだが、その時に読んですごく気に入って本屋で購入。それだけでは飽き足らず小さな友だちにもプレゼントしたりした本がこの『すずめのくつした』だ。

靴下工場を営む家の息子アンガス。お父さんが営む靴下工場は小さいけれど、素晴らしい技術をもっていて、従業員たちは誇りをもって働いている。だけど町の中の大きなお店に客を取られ、町外れの店まで足を運ぶ人はいなくなる。冬向けに赤と白の縞々柄のすてきなデザインを思いつくが人に知られるチャンスもなく客足は増えない…(人事ではない話だ…)。

冬の氷もはるような寒い日、スズメが寒そうに凍えている。アンガスの友だちのスズメだ。アンガスはスズメに靴下をプレゼントすることを思いつく。そのちっちゃな縞々の靴下が生きた広告塔になるとも知らずに。歯車を一番小さなサイズにあわせると…小さな小さな靴下を編み上げる。

アンガスが靴下を作って、それをスズメが嬉しそうに履くくだりが私は大好きだ。政治的な要素はまったくないけれど、真面目にこつこつとがんばっている者が報われる世の中であってほしいと、いつも読みながら思う。子ども自身が機械に油をさしたりしてお手伝いをしている工場の中で、自分がいつも見てよく知っている機械を動かす。そして、その機械をつかって工場稼働の時間外に友だちのプレゼントを作るなんて!その発想、ちょっといかしている。子どもって大人以上に色んなものをよく見ている。大人顔負けで機械を操作するアンガスが頼もしく見える。

この本、挿絵もとてもキュートなのだが描かれているスズメが私にはどうしてもスズメに見えない。ある時大日本図書の知り合いにそのことを言ったら、「えっ?どう見てもスズメでしょう」と言われたのだが、いまだに私にはスズメではなくてカラスの子どもに見えてしまうのであった。ほかの人にはどううつるのか?ちょっと知りたい。

さっき帯をもう一度見たら、「何度も読みたくなるお話」とある。ほんとその通り。私は何度となくこのお話を読みたくなって読んでしまうのである。このシリーズほかのものも面白いので是非機会があれば手を伸ばしてもらえたら嬉しい。
(文:やぎ)