司馬遼太郎の「竜馬がゆく」を読み、坂本竜馬に夢中になった。竜馬関連の本を読んでいるうちに、共に生きた人々に魅せられ、そのうちに、彼らの生きた時代に興味を持ち、気がつけば、明治、大正、昭和と、脈々とつながる歴史を知ることがたまらなく面白く、あっという間に歴史好きになっていた。
司馬遼太郎の本を色々と読んでいて、とても印象に残ったエピソードがあった。
「書斎で調べ物をしていると、思わぬ人物が現れる、最初は名前だけ。時が過ぎて、別の資料をみていると、またその人物が現れ、例えば出身地を知る。さらに別の機会に資料を見ていると、その人物がまたひょっこり顔をだし、経歴などを知る。そうするとその人物が、自分でそばまで寄ってきてくれたように思い嬉しくなる。そういう書斎に居住するひそやかな友人が幾人もいる」
時折、このうろ覚えのエピソードを、人に話していたものの、いったいどこで読んだのだろう?まったく思い出せずにいたのだが、先日、自宅の本棚でこの本を何気なくパラっとめくり、見つけた。嬉しくなって、みんなに紹介したくなったのだ。
印象に残っていたのは、冒頭のエッセイ2編「『美濃浪人』あとがき」「無名の人」。私の拙い文章での説明では、もったいない。ぜひ、司馬遼太郎の筆致で味わい、読んでほしい。
改めて読んでみると、なるほど、私が魅力を感じる歴史の面白さのひとつはこれだと思うし、司馬遼太郎の描く歴史上の人物が魅力的なのも、とてもよくわかる。
歴史の表舞台に立ち、有名な偉人の成し遂げたことは輝かしく、いつまでも歴史に残る。しかし、広く知られてなくとも、ほとんど無名だとしても、尊敬すべき、心奪われる人物は、たくさんいる。
そんな人物に出会える喜びを、大人だけでなく、子どもたちにも知ってもらいたいと思っている。「無名の人」は、1975年『中学校国語二』に掲載されたものらしいので、子どもでも楽しく読めると思う。
シリーズは全8巻(文庫版)。司馬遼太郎が遺した仕事のうち、歴史上の人物を主題とするエッセイを集成したもの。この巻、この2編だけでなく、どのエッセイも、それはそれは面白い。ぜひ手にとって、楽しんでもらいたい。(文:みなりん) |