アーカイブス
「この本おもしろかったよ!」
1ヶ月に約1冊のペースで朔北社出版部の3人がお気に入りの本を紹介。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

【紹介した書籍に興味をお持ちの方へ】 この本は朔北社の出版物ではありませんので、出版状況等に関しましては、お近くの書店、あるいは各出版社にお問い合わせ下さい。

ゼロ! 
こぎゃんかわいか動物がなぜ死なねばならんと?

片野ゆか/著


集英社


   『ゼロ!』とはいったい何を意味するのか。いきなり副題から九州弁まる出し。見ると著者が九州出身なわけではない。ではなぜ?
 この本は熊本市動物管理センター(のちに、熊本市動物愛護センターとなる)の職員たちが経験してきたことを著者の取材を元に書かれている。なるほど熊本だからかと言葉の謎が解けた。
 この本を読み始めると、この本に書かれたすさまじい現実に涙が止まらない。同時にどこか希望の光を目指す彼等から目を離せなくなった。始まりは2001年4月にこのセンターに配属された松﨑正吉さんが見た光景として書かれている。彼が熊本市のこの職場に勤め始めた当初、このセンターでは毎週二回動物たちが殺処分されていたそうだ。過去のデータを見るとその当時この職場だけで500~700頭もの捕獲・保護犬がいたとある。
 基本的に、この部署に配属されるのは獣医師の免許を持つような人たちも多い。以前は動物園勤務なんて人もいるわけである。動物の病気や怪我を治すために勉強してきた人がその逆のことを仕事にするということはどんなに残酷なことだろう。仕事でしていることとはいえ、辛かっただろう。そんな本心もこの本には書かれている。そしてその葛藤も。
 仕事だから?役所だから?と一方的に彼らに全て押し付け、挙句の果て、殺処分を責めることが誰にできるだろうか。文句だけを言うのは簡単だ。ではそうならないために一緒に考えたり、手を貸してくれる人が沢山いたら彼らはどんなに救われるだろう。
 車からゴミを平気で道路に捨てるように、飼っていた動物を平気で捨てる人たちが正しいはずはない。では一部のそういった人たちと行政だけの問題だろうか。売る人は?飼っている人は?そしてそれを傍観している私たちは?良くないと知りながらも変えられない。見て見ぬふりをしていたら何もかわらないというのは今の日本に住む人たちが身をもって感じていることではないか。つまりは様々な問題は当事者たちの問題であると同時にそれを取りまくみんなの問題でもあるのだと感じた。
 本のタイトルにもなっている「ゼロ!」は、まさにこの殺処分する犬や猫を「ゼロ」にしたいという熊本市動物愛護センターで働く人たちの気持ちを表している。のちに彼らはもっとも「ゼロ」を実感する日を迎える。多くの関係者の努力の結果だ。だからと言って保護される犬や猫はなくならない…。また殺処分も…。熊本市だけでなく、どこの場所でも起きている問題なのだ。
 子どもに道徳教育云々言う前に…本来道徳なんて言葉で片付けたくはないが、なにより道徳を知らないのはほかならぬ大人ではないか!知らないことで不幸が起こらないように…知らないでは済まされないからこそ、もっと社会に目を向けなければ。そして、この本を日本中、いや世界中の人に読んでほしいと切に願う。とくに動物を飼っている人、そしてこれから飼う人(家族みんな)にも。一人が出来ることは少しでも、一人一人が出来る事をやれたらと思う。自分ぐらいやらなくてもと思わずに、自分にも何かできるかと前向きになったら、日本人一人が一円ずつを出し合ったら一億円になるように何か大きく変わるのではないだろうか。

※私は集英社の単行本で読んだが、集英社文庫でも『ゼロ! 熊本市動物愛護センター10年の闘い』という題名になって出版されている。(文:やぎ)