この本は、呉服店からジーンズ工場に転換したオイカワデニムという会社の話。創業社長が亡くなったり、不景気に見舞われたりという企業経営につきまとうエピソードも面白いが、なにより2011年3月11日の東日本大震災に巻き込まれたあとの展開が読者を引きつける。作者の今関さんにはあの大震災のときに、ちいさな連絡船で気仙沼の大島を孤立から救った菅原進船長を描いた『津波をこえたひまわりさん』という作品があるが、この本はその姉妹作品である。
大震災・大津波で住まいを失った人たち150人ほどが、高台にあるオイカワデニム工場に避難してきた。オイカワデニムは工場内部を片付けて、避難者に開放した。ダンボールやデニムの生地を使ってとりあえず生活できるようにしていく。大災害の只中で、避難者の人たちとともに生活するために、宮城県庁と交渉して救援物資が届けられるようにし、オイカワデニムの工場を民間第1号の避難所として認めてもらった。地域の人たちと力をあわせて生活していくなかで、いろいろやっかいななことも起きたにちがいないが、オイカワデニムの社長及川英子さんは前向き楽天的に考えたくましく行動したようだ。そして、中心にいる人のからっと明るい性格は周りの人達に波及していった。それを描く作者がまた前向き楽天的に考えるので、読み進むうちに、苦しい厳しい環境のなかで生き抜く元気が出てくる。(文:宮) |