新版だが、旧版は1994年に出版されている。復刊を求められて読み直してみたが、書き改める必要を感じなかったそうで、現代にあわせるべく、冒頭に短い補足が付け加えられた。20年以上まえに書かれた部分は、外交関連の古典的文献はもちろん、日本の外交官の残した文献を縦横無尽に博引傍証してバランスの崩れない見解にまとめて、外交の何たるかをあきらかにしている。しかし実は、冒頭に付け加えられた短文こそが、現代日本の状況に照らして、読者に強く訴えてくる生々しい認識を示しているのだ。著者は、戦後70年に及ぶ歴史の中で形成されてきたシステムがガタガタと崩れてきた深刻な事態を、安保法制をめぐって3人の内閣法制局長官が明確に批判、反対していることから書き始めている。自衛隊、憲法、日米同盟にからんで、一言でいえば日本の外交が独自性、むしろ独立性というべき性格を失ってしまったこと、端的に言えば現代日本の外務官僚にとって、日本の国益優先で思考・行動するのではなく、アメリカのご機嫌を損なわないように考え行動することが最優先課題になっていると主張する。「・・・ごときで、日米関係を壊してたまるか」が外交政策の基軸になったと指摘している。あらゆる問題が日米関係維持という立場から処理される。由々しき事態であるが、なおひどいことに、ことは外務官僚に限られず、霞が関官僚全体の行動様式になっているというのである。著者の孫崎さんが、現代日本の政治、社会を憂うる人たちに広く読まれる所以である。(文:宮) |