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「この本おもしろかったよ!」
1ヶ月に約1冊のペースで朔北社出版部の3人がお気に入りの本を紹介。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

【紹介した書籍に興味をお持ちの方へ】 この本は朔北社の出版物ではありませんので、出版状況等に関しましては、お近くの書店、あるいは各出版社にお問い合わせ下さい。

はしっこに、馬といる
ウマと話そうU


河田桟/著

カディブックス


 馬と話せたらどんな感じだろうか?馬に限らず、動物たちと一緒に暮らすとき、その相手である動物たちに対して、動物同士なのに話し合えないもどかしさを人は感じてきたのではないだろうか?いや、もしかしたら通じ合えている人もいるかもしれない。
 動物の近くにいて、彼らのことをわかろうとする人には、彼らが何を考えているのかを、仕草や目の動き、歯のむき出し方なんかでコミュニケーションをとることができているようにも思う。
 この本を読んだら、馬は私だなと思った。うまくいえないけれど漠然とそう思ったのだった。そして、ウマもヒトもそうかわりはしないのだと気づく。人は人と話すこと、紙に書き記すこと、ときには目と目でコミュニケーションをとるけれど、あわてないでゆっくりとお互いむきあえたら、もっと気持ちのすれ違いも少なくなるのかもしれない。慌しい生活の中で、余裕がないとき相手のことが、わからなくなることが人の世界では沢山あるように思う。
 著者の河田さんは、あるとき気づく。馬といると、自分の心が喜ぶことに。彼女は馬と一緒にいたくて、与那国島に引っ越し、馬のカディと暮らし始めた。暮らすといっても、カディは小屋暮らしではなく、繋がれるでもなく外を自由に歩き回り、森で寝たりするという、そういう距離感だ。人と馬の関係にも色々あるようだが、河田さんの場合自分が上に立つという関係を好まなかった。二人?(一頭と一人)の関係がどのように作られていったのか興味深い。
 河田さんは、カディとのことを本にした。ウマとヒトが仲良くなれたらという思いで、自分がカディと一緒にいてわかったこと、通じ合えたこと、会話したことを二冊の本にしている。一冊は『馬語手帖』(カディブックス)。もう一冊が、もう少しカディと、河田さんの関係や、心の動きについて書かれた本書だ。本を読んでいる最中も、そして読み終わったあとも、心の中はゆったりとした気持ちに包まれ、河田さんのことも、そしてカディのことも大好きになった。私も河田さんの言う「はしっこ」の、そのさらにはしっこで一人と一頭を見ているような気持ちになっていた。本のイラストもご本人が描かれているのだけれど、それがまたこの本にぴったり。けして書き込まれた絵ではないのだけれど、迷いのない素朴でまっすぐな筆運びに、ウマに対する愛情のようなものが感じられる。河田さんがいつも馬の傍にいて、馬をよくみている姿が目に浮かぶようだ。ついつい頬が緩む、ウマをかわいいなあと思ってしまうような絵なのだ。この本を出しているカディブックスは河田さんがやっている出版社で、そこからでている二冊が、先ほどの二冊というわけである。こちらに載せた表紙は外側のケース付。そしてケースをはずした表紙は横長でこんな感じでシンプルだけど温かい。http://kadibooks.com/home/book/hashikkoniumatoiru/
 人とヒトの距離感、ヒトと動物の距離感は違うようで似てるんだよなあ。そう思いながら本を閉じた。きっとまた読み返すだろう。(文:やぎ)