何年前に買ったかも忘れたが(おそらく5〜8年前か?)、その当時古本屋で買ったのがこのマンガだ。もう何度も読みなおしては楽しんでいる。今の世の中都会で暮らすにはある程度のお金なしでは行きられないではないだろうか。お金をあまり持たずに暮らす方法なんてあるのだろうか?私だって貯金もないような暮らしだけれど、食うには困らず生きている。私の友人にもあまりお金を持たないけれど豊かに暮らしている見本みたいな人がいるにはいるのだが。私はその友人(女性)の生き方をすてきだなあとも思っている。
さてさてこの本はどんな本かというと最初はマニュアルと書いてあるだけあって貧乏人の必需品が紹介されていたりするが、実は一人の青年(耕助)の暮らしを描いている(もちろんフィクション)。年は20代だろうか?大学は出ているようだが、特に定職についているわけではない。それどころかまともに働きに行っている日を数えるほうが少ないくらい。
よくアパート?下宿の自室でゴロゴロしている。かと言ってダメな人かというとそうではないのだ。受験生に勉強を教えたりもするし、靴の手入れもするし、汗をかけばTシャツを着替えるし、頼まれごとなんか、いやがらず最後までやってくれる人のよい人である。おしゃべりでもないが、全然喋らないわけでもない。遠慮もあまりないが、無遠慮でもない。そしてなによりちゃんとかわいい彼女なぞいたりしてデートなんかもするのだ。お金はないがケチでもなく、お金のある人と一緒にでかければごちそうになったりもするが、卑屈に生きているわけでもない。そしてなによりバリバリと主張するわけでもないが自分をもっている気がする。
読むと昭和の匂いがするアパート(下宿?)の大家さんとその住人、彼女、病院の先生、お寺の住職さん、タバコやのおじいさんおばあさん、近所の子供たち、お風呂やなどでも様々の人と自然体で交流している。誰しも少しは人前でいい顔をしてしまうがそういうところが全くないのが主人公の耕助なのだ。私なぞは最近人間関係に疲れたりギスギスしてしまうこともあるのだけれど、これを読むとそんなことどうでもよくなってしまう。そして彼が食べる美味しそうなたべものを食べたくなってしまう。それはのり弁だったり、アンパンだったり、豆腐だったり、炊きたての御飯だったり、さんまの焼いたのだったりする。最近になってふとこのマンガの奥付を見たらなんと2005年11月22日となっていた。すごく昭和のにおいがプンプンしたのでもっと昔のマンガだと思っていたのだけれど、作者の前田さんはなぜこの時代にこの作品を描いたのかななんて一人思いにふけっていたが、やはり更に調べたらそんなことはなく、1986年頃雑誌の連載で掲載されていたらしい。まあそうでしょう…。よかったその方が合点がいくし。
ビンボー生活を豊かにするものの一番を挙げるとしたらなんだろうか。私なら耕助の人柄をあげるだろう。貧乏でも豊かに暮らすのには人柄もとても大切なのだなあと思った瞬間でもあった。(文:やぎ) |