この本の主人公有森覚さんは、交番にもちこまれた動物を保護し、世話をしている。虐待され、きずつき、すてられたちいさないのち。その数、げんざい150匹。有森さんはボランティアで移動動物園を開き、動物とふれあってもらうことで、子どもたちに命の大切さをうったえ続けている。
おまわりさんが警察官の仕事をしながら、すてられている動物をたすけているうちに助けた動物の数がだんだんふえて、いつしか動物園ができるほどになっってしまったわけだが、これはたんなるお話ではなくて実話だから、やっかいでよく考えなければいけない問題が出てくる。警察官になってまもなくのころ、カメをたすけて交番に連れ帰ったとき、先輩が言う。「しっかりおぼえておけ。警察は、人間を助けるところや。動物を助けるところやない。いいな。おまえ、このごろ、ハトやカメやって、動物のことばかり言うてないか。」それから、家族を抱えたおまわりさんの生活は、月給の大半が動物のえさ代になってしまうという問題もでてくる。今関さんはいろんな問題をふくんでいるいるこの話を、しっかりとつたえたうえ、読者にさまざまなことを考えさせる。
今関さんは、子どものためのノンフィクションシリーズをすでに何冊も書いているが、すばらしい作品が、また1冊加わった。(文:宮) |