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今 日記を書いているのは台所の流し台の上。そこに犬の毛布とティーコゼーを敷いて、足はシンクの中に伸ばしている。石鹸臭いし居心地もよくないけれど、まだちょっとでも明かりが残っているのはここだけだし、はじめての場所って思いがけないことがひらめくのよね。たとえば自分で最高の詩を書いたのは鶏小屋だった。最高といってももちろんすごい作品ってわけじゃない。だいたいがひどすぎる私の詩のことについて話すのはもうやめにしよう。
………………………………(「第一部 六ペンスのノート 三月」 第一章より)
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