タイトルにまず引きつけられる。あちこちに書いてきた短文を集めたエッセイ集で、内容によって5部に分けられている。第1部が書名になっている、虫や植物のことを書いた博物誌といえる文章で、鈴虫のようなちいさな動物や猫の話など、こまかな神経、観察眼に感心する。さすが詩人の目と耳が生きていると思いつつ読み進んだ。しかし、さらに2部、3部と読み進むと、これは木坂涼さんの生活のいろいろな断面を描き、生きていればぶつかるさまざまな出来事とそれに彼女がどのように感じ、行動したかがわかる本だ。ちょっとはなしがそれるが、エッセイとはそういうものらしく、新聞に週1回連載される、作家はもとより、さまざまな分野の人々のエッセイは書き手の人柄、人物をあらわすことになっており、私にはエッセイ恐るべしとの思いがある。そういうわけで、この本から、木坂さんの生き方、感性を知り、共感しつつ読んだ。その結果、改めて納得できたことがことがある。7年程前から4年間にわたり出版した小社のウォンバットシリーズについて、木坂さんは、産経新聞紙上に大変好意的な紹介を書いてくださった。ウォンバットシリーズとは、オーストラリアのルース・パークの作品で母国のラジオで17年間も放送された人気シリーズで、まぬけなウォンバット、世話好きでしっかりもののマウス、プライドも毛もすぐに傷つく猫のタビー、この3匹が活躍する「冒険物語」である。冒険といってもファンタジーではなく、冒険とは3匹が毎日しでかすことのなかにある。3匹がくりひろげるドタバタは、すねたり、泣いたり泣かせたり、助けたり助けられたり、ときにはいじわるをしたりと、まずどこにもいるこどもたちの騒動である。しかし、自分をだましきることができずに仲直りして3匹でまた一緒にくらしていく。うまく表現できないが、この「ベランダの博物誌」を読んだあとでは、そんな3匹をこよなく愛する木坂さんのことがとてもよくわかったような気がした。そして、ウォンバットを愛読してくれたことがうれしくなった。(文:宮) |