古事記、日本書紀から書き出して、現代に至るまでの宗教史である。宗教史というが日本列島に住む人々の社会と宗教との関わりを扱っていて、個別宗教の教義内容を解説しているわけではない。あくまで、それぞれの時代の社会と宗教的活動や、人々の精神史とからめて書いている。
冒頭は丸山真男の「歴史意識の古層」から始まり、古事記、日本書紀に仏教が影響を及ぼしているという興味深い指摘に続いていく。また今日否定的に評価されることが多い「葬式仏教」の、日本人の宗教生活上の意味の指摘、明治時代になってからのキリスト教が、すでに中性においてみられた仏教の一神教化の傾向が背景に会って、さほどの違和感なしに受容されたことなど、日本人の宗教意識の大きな流れが的確に描き出されている。
コンパクトな本だが、現代日本社会の宗教についてかんがえるときの、おさえるべき歴史的経緯をわかりやすく記述している優れた入門書である。(文:宮) |