本書は1989年のベルリンの壁崩壊から今日までの20年足らずのドイツを、とりあえずの対象にして、哲学、文学、芸術などの人文的研究と、EUに端的にみてとることができる政治・経済の分析との関連をつねに意識して、知識人の論争を紹介しながら、現代ドイツのかかえる諸問題を解説している。
現代ドイツのかかえる諸問題とは、たとえば、ドイツ統一の際の手続きや、ネオナチの暴力の問題である。ネオナチの暴力の問題には、トルコその他の国からの労働者移住問題、それにからんだ庇護権の問題、つまりはナチスとユダヤ人問題が背景にあることがわかる。
持続的な観察によって整理されたドイツ事情についての解説は、新聞を読みテレビニュースを見ただけでは充分にはわからない、ドイツの事情やその背景の問題を教えてくれる。
特定の地域やテーマについての持続的観察、研究の重要性を再認識させてくれる本である。
(文:宮) |