今度朔北社からでる絵本「恋するひと」の翻訳をお願いした、内田也哉子さんのことを知ろうと思い、何冊か本を買った。「会見記」(リトルモア刊)「親と子が育てられるとき」(岩波アクティブ新書刊)だ。そのうちの後者の本が内田さんと「いのちのバトン」の著者である志村さんの対談だった。それが私の心をゆさぶったので「いのちのバトン」をよむきっかけとなったのだった。
志村さんはバースセラピスト。バースセラピストとは聞いたことのない肩書きである。しかし本を読んでいるうちにその職業が志村さんにはピタッと来る気がした。世田谷区奥沢に「癒しの森」を夫婦で開設し、旦那様は整体療術師として、志村さんは人の誕生から臨終までを見つめたバースセラピー、カウンセリングを行っているのだ。
心が萎えてなにもしたくなくなってしまう状況になる可能性というのは誰の心にもあるものだと思うのだが、その中で自分の今の状況が整理されて現状が見つめられるようになったときに、抱えている問題を解決する方向に向かうときに、人は赤ちゃんを産むのとは形は違うのだけれど、その人の心になにかが生まれるという意味でのバースだと語っている。
この本は彼女がバースセラピストとして関わった患者さんたちのエピソードを集めた本。実に色々な人達が登場する。読んでいたら気持ちがすごく楽になってきた。けっしてよくある癒しの本というわけではない。派手さはちっともなく、むしろ淡々としているなかにホッとする人柄が溢れているのだと思う。
地球を五感で感じるということを志村さんはこの本の中で、言葉を変化させながら書いているのだが、末期癌の患者さんが「死ぬとどうなる?」という質問に「葬儀があってその後、土の中へ…」との説明をする。でも、そんなことわかりきったことである。そしてどうするかというと…実感が沸くようにあることをするのである。そのあることとは、地面に埋まってみるということをしてみたのである。枯葉の山を掘り、人間が入れるようなひつぎ状のニセのお墓を作りそして再び枯葉をかぶせる。その人は埋まったまましばらく静かに横たわったあと目を開きその後「気持ちがいい。温かい」と言ったのです。自然が自分と同じところにいて、地球と一体になっている感じがしたというのだ。人は自然の中から生まれそして他の生き物と同じように自然に帰っていくのだということがその場面からしみじみと感じられた。
とにかく、やさしい気持ちになる本です。心がささくれだった人の心の栄養に。(文:やぎ) |