この本はエッセイ集?フィクション?それともノンフィクション?とにかく疑問が多く残る本だった。
でもしかし、心に残ったのは何故なのか。太田光とは皆さんも一度はテレビでみたことがあるであろう人気お笑いコンビの爆笑問題のボケの方の人である。私は以前、彼に似ているといわれてから彼に親しみを覚えていたのだが、著書を読んだのは初めてだった。短い文章の集まったこの本は太田光が大まじめに書いているのだ(たぶん)。本当らしいことも、本当か?と思うことも同じように淡々と書かれているので、全てを真に受けて読んでいた私は驚きを隠せず、なんと不思議で面白い人なのだと思い、家で夫に「太田ってこうこうこうなんだってさ〜。次々奇異なことが起こるものだよね」と、さも知ったかぶって笑いながら話したところ、「おまえ、それはうけねらいに決まっているだろうが」と、言われてしまった。それがもしホントのことじゃないのだとしてもこの文章の中に太田光という人そのもののかけらを見た気がした。自分と多少同じ匂いを感じたのかもしれない。
この本の中で一番心に残った「二つの旅行」という題名の文章がある。彼は高校時代一人の友達もいなかったらしい。そんな高校時代の旅行についてだ。一つ目の旅行は嫌だった修学旅行。もう一つは一人旅である。その文章の最後の方にこんな一文がある。
…一人っきりなのに、全く孤独感がないのが不思議だった。周りに人がいないということが、私を孤独から解放していた。…(抜粋)
読んだ瞬間、心にその文章がストンと落ちてきた。
人間は一人では生きられないけれど、誰しも群衆の中の孤独を感じることがあるのではないだろうか。私はまさにそう思うことがけっこうあり、この気持ちが分かる気がするのだ。孤独というのは気持ちの問題なのかもしれない。離れた場所で暮らす人と会えないのはさみしいかもしれないが、離れていてもどのくらい心が通い合っているかなんだろうなあと思う。無理しないで人と付き合うことは大切だなとも思う。結局はそういう気持ちは人にも分かってしまう。一生のうちに一人だけ、一人だけでいいから心通い合う友(夫婦でも親子でもいい)がいるだけで人は孤独にならないんだろうなと思う。
まあこんな、真面目くさった紹介をしてしまったが、中身は実はついつい笑ってしまう事実?の方が満載だ。忘れた頃に又読み直したくなる本である。(文:やぎ) |