江戸が明治になってまもない頃、江戸はまだこの国の至るところに残っていた。しかしいずれはそれも消えてなくなることは、誰もが心の底で感じていただろう。失われるものと失われることに対する不安、焦燥、怒り。あの時代、そうした感情が一つのかたまりになって浮遊し、着地する場所をさがしてふわふわと漂っていたのではないだろうか。若さはそうしたものに鋭く反応する。頭で理解するより身体で直接受けとめてしまう。上野の彰義隊や会津の白虎隊の少年たちについて考えるとき、時代のもつ空気にのまれずにいたことの方がむずかしかったろうなあ、と思う。
この作品では彰義隊にかかわる三人の少年の視点から戊辰戦争の上野の戦いが描かれている。養子先を追い出されて隊のなかに自分の居場所をみつけた吉森征之助。彰義隊に共感して家を捨てて入隊した秋津極。二人の友人で除隊をすすめるために隊にかかわるうち、戦いに巻き込まれてしまう福原悌二郎。彼らは時代の空気を吸ってはいるが、基本的には普通の感覚の少年たちで、彼らの考えていることや悩み事は私たちにも通じるところがある。だから感情移入しやすくて作品の世界にすっぽり入ってしまうのだが、読んでいるうちに、ふと彼らと自分をへだてる決定的な差があることに気づかされる。それが死との距離感とでもいうべきものだと知ったとき、タイトルの合葬という言葉が心に重くのしかかる。一つの時代の終焉をリアルに感じることができる作品。ありそうでなかなかない気がする。
ちなみに本作品は第13回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。同じ作家の「東のエデン」(ちくま文庫)とあわせてYAの棚にぜひ。(文:京) |