「患者よ、がんと闘うな」を書いた著者の本である。
成人病、生活習慣病(この言い方に著者は反対しているが)と呼ばれる病気に、われわれがどう対処すればいいのかを事実を集め、根拠を探りながら説いている。
通常言われていること、行われていることに真向から反対し、あるいは対立する考えをくり返し書いている。その最たるものが定期検診批判である。私たちの社会でも年一回検診を実施しているが、著者は必要ないと言う。むしろ害があると言う。
人間、年をとれば最後は何かの病気によって死ぬ。これは誰も避けられない。定期検診は自覚症状のない人から病気を早期発見する。すると、発見された人は、たとえば早期がんと宣言されればそれだけでパニックになる。ともかく精神的に大きな打撃を受ける。そして薬を飲まされ、治療をほどこされ、となる。しかし早期発見されたがんの大半はほっておいて大丈夫だというのが著者の見解で、この辺は簡単に納得しない読者も多いだろう。つまる所、生き方、価値観にかかわる事柄であるから。
ともかく大切なことは自覚症状がないのに病気を早期発見し、投薬、治療しても寿命が延びたということが医学研究の上で明らかになっていないのが現状で、要するに患者を精神的、経済的に苦しめるだけなのだ。年をとれば肉体がおとろえるから血を確実に循環させるために血圧があがるのはむしろ当然のことなのに、血圧の正常範囲が決められていて(驚くべきことにこの基準値が大した根拠のない数字だという)その範囲を外れると、たちまち降圧剤を飲まされる。むしろ寿命を縮めているかもしれぬとまでいう。
高血圧病の人が3700万人いるといわれているらしいが、この3700万人には上がるのが当たり前なのに病気にされている人が沢山含まれている。問題の背景に、医者と金の問題、つまり医者と製薬会社の関係がある。(文:宮)
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