「この本おもしろかったよ!」

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1ケ月に約2冊のペースで朔北社の社長である宮本と出版部員のお気に入りの本を紹介。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

【紹介した書籍に興味をお持ちの方へ】 この本は朔北社の出版物ではありませんので、出版状況等に関しましては、お近くの書店、あるいは各出版社にお問い合わせ下さい。

君ならできる 君ならできる

小出義雄/著

幻冬舎
(幻冬舎文庫)

マラソンを見るのが大好きだ。なので、今回のアテネオリンピックでも女子マラソンを一番楽しみにしていた。前回のシドニーオリンピック、笑顔でゴールした高橋尚子が「とっても楽しい42qでした」と言ったとき、こちらまで心から嬉しくてたまらない気分になった。明るく楽しくマラソンをしている彼女の姿がとても好きだった。アテネオリンピックで彼女がまた笑顔で一番になることを楽しみにしていたのだが、代表選考者の中に、高橋尚子の名はなく、本当にがっかりした。
「高橋尚子じゃなければヌレデバにもラドクリフにも勝てない!金メダルなんて無理!」と周りにも熱く語って、少々迷惑がられていたくらい、残念だった。

そしてオリンピックまで、あと一ヶ月という時、単行本で出ていたこの本が文庫本になっているのを見つけた。
この本は、高橋尚子、有森裕子など、世界で活躍するランナーを育てた小出監督の指導術、選手ひとりひとりが持つ能力をどのように引き出して、伸ばすか、主に高橋尚子がシドニーオリンピックで金メダルをとる直前までのことが書かれている。
高橋尚子が、楽々と金メダルを取ったとは思っていなかったが、ここまでの厳しい練習を重ねていたことと、小出監督との揺るぎない信頼関係には驚いた。
「金メダル」をとるという夢、世界の頂点に立つことを達成するのは並大抵の努力ではなかっただろう。シドニーオリンピックに向けての厳しい練習は、私が文面から感じる以上に辛い練習だったと思う。それでも、高橋尚子は監督を心から信頼して、どんな辛い練習でも一つ返事でこなす。
合わせて読んだ、「夢はかなう」(高橋尚子/著)のなかで、高橋尚子が「マラソンの練習は本当に辛いけど、イヤじゃない」と書いている。この練習をきちんとやれば、夢に向かって一歩進める。明日もっと辛い練習をすればまた夢に一歩近づける。そうやって一歩一歩前に進み、厳しい練習から得た自信が、彼女の夢を叶え、あのすばらしい笑顔でのゴールとなったのだ。
小出監督があとがきに、「一番人生に大切なのは、夢に向かってがんばることだ」と書いている。世の中のどれくらいの人が、自分の夢にむかって、ひたむきにがんばっているのだろうか?私自身、自分の夢に向かって、本当にがんばってきたのだろうか、そして今もがんばっているのだろうか・・。

本の中には、高橋尚子自身のいろいろなエピソードも書かれていた。どれもこれも、彼女の素直でまっすぐな性格をあらわすものばかりで、読んでるうちに、ますます高橋尚子のファンになり、アテネオリンピックの舞台で高橋尚子を見られないことが、輪をかけて残念でならなかった。本を読んでしばらく「やっぱり高橋尚子じゃなければ・・・」が口癖のようになってしまった。

結局、アテネオリンピック女子マラソンでは野口みずき選手が金メダルを取った。とても複雑な心境である。(文:みなりん)