復刊広告で書名を見て、オマル・ハイヤーム詩集の仲間だろうと見当をつけて早速入手したら、まさしくその通りで、解説では、酒の詩人として、李白、オマル・ハイヤームと並んで本書のアブー・ヌワースを挙げている。
本来アルコールを禁じているはずのイスラムの地で、ひたすら酒を愛し、それを公然と言葉にしたことがとても面白い。詩にうたわれた酒の姿は、とても美しくてアラブの酒を見てみたい、飲んでみたいという強い欲求にかられる。
アブ・ヌワースは実生活では文字通り放蕩無頼を極めたうえ、恋は実らぬし、幾度も投獄されるし、波瀾に満ちた人生だった。
詩は単刀直入にひたすら酒を讃美している。その平明で気取らない作風を解説者は李白、オマル・ハイヤームと比べて「俗物もよいところで、官能的快楽をひたすら追い求め、酒色に耽溺した。・・・彼の真骨頂は痛快なまでに背徳的な生き様を堂々と詩に詠んだことである」と言っている。
一読して、アラブ世界で今日にいたるまで口ずさまれ、愛されている詩人であることが、納得できる。すこしも汚ならしくはなくて、清澄なイメージが残る作品である。(文:宮) |