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小さな美術館への旅

小さな美術館への旅

星瑠璃子/著
二玄社
 タイトルに惹かれ、本を手に取り、そのまま吸い込まれるようにして読んだ。
 一人の作家の作品を守る個人美術館が全国にある。著名な作家の美術館から、僻地にひっそりと佇む名の知れない作家の美術館まで40館。著者は各地の小さな美術館を訪れ、取り上げている。著者の感性は、彼らの作品から「匂いたってくるもの、時代を超えて光り輝くもの」に触れ、情熱をもって創作に取り組む作家の姿に共感している。それは美術館への道のりからはじまり、作家の背景にまで視点は及ぶ。著者を美術館への旅へと足を向かわせる背景のひとつに、画家であった著者の祖父の存在がある。祖父が残した日記を読み、苦しい生活の中にあってなお情熱をもって洋画家への道を進んでいった祖父の残影を、各地にねむる画家やその作品に重ねて見ていたのだろうか。

 また、丁寧な視点の美術館探訪記は旅の楽しみを増やしてくれるような内容となっている。開館時間や交通など、美術館に関する情報もついてはいるが、あくまでもエッセイ。本書を読み、興味をもった美術館に赴き、さて自分はどんな感想を持つだろうかと考えたり、本書を手に旅の予定を立てるのもおもしろいかもしれない。(文:かわら)