「この本おもしろかったよ!」

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「A」 マスコミが報道しないかったオウムの素顔

森 達也/著
角川書店
(角川文庫)
テレビ・ディレクターである著者が、オウム真理教の広報部長(当時)荒木浩の同意を得て、彼と行動を共にして長時間にわたってビデオ撮影を続け、ドキュメンタリー番組を作ろうとし、結局テレビでは使われずにドキュメンタリー映画として発表するまでの記録である。
凶悪極まる殺人事件を引起し、日本人から批難され嫌われた教団のことだから、仕事は困難の連続である。フリーディレクターである著者と、製作費を出してくれるはずのテレビ局や制作会社とのやりとり、さらにオウムについての報道や番組制作にかかわるいろいろな人々、──信者や信者被害者、信者の居住に反対する住民、警察官、テレビの同業者、映画を見たドイツ人──の反応が淡々と描かれている。
実はこの本の面白さは、このように内容を紹介することではよくわからないかもしれない。著者自身が自分や家族の生活を心配しつつ、自分の行動に絶えず迷い、悩みながら取材活動を続け、また考え、議論し、決断していくプロセスを正直に書き続けていることが面白いのであり価値あるところである。(文:宮)