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ポスおばあちゃんのまほう

メム・フォックス/文 ジュリー・ヴィヴァス/絵
加島葵/訳
朔北社
 今回は小社の新刊絵本をここで紹介! オーストラリアの森に住むポスおばあちゃんとハッシュ(女の子)という2匹のポッサムの物語。ポッサムというのはお腹に袋を持ち、木の上に住む、イタチのような姿の動物。ウォンバットやコアラ同様オーストラリアだけに住む動物である。そんなポッサムのポスおばあちゃんは、なんと魔法使い。外敵から身を守るために、孫のハッシュに姿を消す魔法をかける。透明ポッサム(?)になったことで、ハッシュはヘビにねらわれることもなく、いろんな冒険もできたが、やはり元に戻りたいこともある。ある日、おばあちゃんに魔法を解いてとお願いする。ところが、ポスおばあちゃん、魔法の解き方がわからない。辞書を調べても解き方は載っていない。こまった、こまったで一晩経ち、ようやく思い出した手段が・・・。と、つづきは是非手にとって読んでいただきたいのだが、後半は、この2匹のポッサムが広いオーストラリア大陸をかけめぐる。パースにはじまり、アデレード、メルボルン、タスマニア、シドニー、ダーウィン。地名を聞いただけでも自分が旅をしているような気分になる。そして、行く先々でオーストラリアならではの、日本ではなじみのないお菓子などが登場する。ガイドのような趣きに、大人も楽しめる要素が満載。

 解き方を知らずに孫に魔法かける、向こう見ずなおばあちゃん。解決策がわかれば、即行動! 派手なエプロンにスニーカーという出で立ちで、寝袋とハッシュを背負って自転車で大陸をかけめぐる粋でパワフルなおばあちゃん。ポスおばあちゃんのキャラクターがなんとも個性的だが、それを愛らしく描く、ジュリー・ヴィヴァスの画風がまた魅力的だ。流れるような筆致の水彩色。登場する動物たちは、かなり実物に忠実ながらも、目がやさしく、愛らしく描かれている。
 スピード感あふれる物語の展開に身をまかせ、登場する動物、たべもの、地名に思いを馳せながら、ポスおばあちゃんとハッシュのかけ合い、絵柄のかわいらしさを楽しむ。そんな絵本。

 ところで、オーストラリアというと、小学生の頃に毎週欠かさず観ていた「南の虹のルーシー」というアニメを思い出す。オーストラリアのアデレードに移住してきたイギリス人一家が自分たちの農場を持つ物語で、主人公の少女ルーシーの目を通して描かれた内容だったと記憶する。新天地求めて、家族が困難を乗り越えていく物語はほかにもあるが、この物語は、舞台がオーストラリアということもあり、めずらしい動物がたくさん登場することが子どもには興味深かった。カンガルー、ウォンバット、コアラにはじまり、ルーシーの飼い犬ディンゴ。このディンゴ、なかなかの忠犬ぶりで主人公の危機を救うなど、少女と動物との交流もこの作品の魅力だったように思う。
 ポスおばあちゃんの絵本で、オーストラリア関連の情報を集めるついでに、この作品について調べてみたら、原作があることを知った。メルボルン出身の作家フィリス・ピディングトン作の『南の虹』。読んでみようと思ったが、講談社から出されていた翻訳本は現在絶版。でも復刊の兆しがある様子。まだまだ知られざるオーストラリアの文化。それに触れるためにも、この作品もぜひ復刊してもらいたい。(文:かわら)