「この本おもしろかったよ!」

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街角のエコロジー 見えない自然のはたらきを見る

三島次郎/著
玉川大学出版部
シクラメンは別名「豚の饅頭」ともいう。そして、キーウィはシナサルナシ、ダリアはテンジクボタン、コスモスはオオハルシギク。風情のある日本名をもっていながらカタカナ語におされている植物が、たくさんいるようだ。おもしろかったのでつい書いてしまったが、植物の名前の由来の本ではありません。
著者の三島次郎氏は生態学者で、「街角での自然との新しい出会いのために、ちょっとしたきっかけを提供したい」という気持ちで本書は書かれた。そのとおり、ふだんわたしたちが気にもとめないような事柄に焦点をあてて、自然との共生とはどういうことかをわかりやすく説いている。ドブや雑草、よその庭の梅の木、あるいはどんぐりの形など、わたしたちが自然との関係を見つめ直すきっかけになるものは、身近なところにも無限にある。
環境保護というと、つい名のある地名を思い浮かべてしまうくせがわたしにはあるが、都会の中の空き地やコンクリートの隙間をぬってはえてくる雑草も、ともに二酸化炭素を吸収し酸素をはき出している、わたしたちを取り巻く環境という意味ではおなじなのである。そのことをときどき自分のなかで確認する必要があるよなあ、と本書によって教えられた。
啓蒙的な本であるのに押しつけがましい感じがしないのは、著者が人間をふくめ、すべての生き物に公平な愛情をそそいでいるからだろう。自然が前より身近に感じるなあと思ったら、今度は自分の方から歩みよってみるのもいいだろう。自然はどこにでもあるのだ。(文:京)