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地雷の村で「寺子屋」づくり
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カンボジアひとりNGO栗本英世の挑戦

今関信子/作
PHP研究所
タイと国境を接するカンボジアの小さな村ポイペットで、ただ1人、現地の子どものために寺子屋を作る活動をしている日本人・栗本英世さんを訪ねた、作家・今関信子さんのノンフィクション読物である。今関さんは児童文学作家と言われているが、そしてこの本も小学生上級から読める子どものための読物として出版されているが、今関さんの書きっぷりはそういうことにほとんど影響されていない。ただ子どもの読者を想定して、スキッと頭に入るような文章で書かれているが、内容にふさわしい、また内容に必要な表現を自然に用いて、伝えるべき事を伝えている。地雷もボランティアも、いまどきは一種のはやり言葉になった観があるが、それは表面的なことがらに過ぎない。
カンボジアの地雷問題は依然として存在しているし、その問題に対しているボランティアが今もいるとうことである。今関さんは現実感覚にすぐれた経験豊かなおばさん作家の目をどこまでも手離さずに、栗本さんにくいさがっている。たとえば現地活動に必要なお金のこと。疑問に思ったことをあいまいにせず、執拗に問い続けている。それから現地での経験は1週間ほどの決して長い時間ではないが、それでも見るべきことは見て、理解を深めていく。出かける前にペットボトルの水を沢山つめこんだ重たいリュックを背負って、いわば構えた姿勢でいたのが、帰国するときには、ペットボトルの水を飲み尽くしたばかりではなく、体から力が抜けて、対象をじっと見ることができるようになったことが、読者に伝わってくる。
栗本さんの場合はそれまでの人生の歩みと深く関わった活動としてボランティア活動がある。ボランティア活動について考えさせられる。(文:宮)