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北の国から 前・後編

倉本聰/著
理論社
北海道富良野を舞台に小さな家族が織りなす物語。1981年から放送され、シリーズ化となったドラマはあまりにも有名。この本はそのテレビドラマのシナリオ。
テレビのシナリオが手にはいることは関係者でない限りめったにない。著者も冒頭の読者への理書きで、「シナリオは制作関係者だけが読む出版されない文学」と記す。

舞台の台本(戯曲)が文芸に近いとされるが、演劇は、台詞で場を表現するため、同じように言葉だけで表現する小説などに通じるものがある。一方、映像によるところが大きいのがテレビや映画の台本。

だが、テレビのシナリオも活字で読むとより戯曲的になる。人物の性格づけ、社会のなかで揺らぎ悩む人間の姿が活字から浮き上がり、映像作品とは違う世界が生み出される。活字の不思議さ。「ただ読むだけではない創るよろこびをも感じるだろう」という著者の言葉を体験できる。

シナリオを読むことのおもしろさを味わうのにちょうどいい作品。(文:かわら)