「この本おもしろかったよ!」

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アメリ

イポリト・ベルナール/著
リトル・モア
映画で話題になっていた時に本屋でふとこの本を手にした。映画に興味があったこともあるが、実は表紙と挿絵が、ちょっと前から気になっていたのだ。

主人公はちょっと臆病な女の子アメリ。でも、ある日、自分の部屋の中のタイルのずれたところから、昔の住人が残したのであろう宝物(おそらく)を発見したらどうするだろうか。私ならば一通りみたあと、途方にくれて処分してしまっただろう。
けれども、アメリにとってはダイアナ妃が亡くなったことよりも重要な出来事だった。それも40年も前に少年であったであろう持ち主の…その缶の中にはサッカー選手のプロマイドやらブリキのレーシングカー、ビー玉などが大切にしまわれていた。缶を大切に隠していた持ち主の元少年をみつけだして、宝物を返してあげたいと思ったアメリは、昔ここに住んでいた家族の名前を聞き出し探し始めた。ついに見つけだしたその人に、ユーモアたっぷりの、驚きをプレゼントしたのだ。もし、無くしてしまった昔の思い出の品が突然、なぜこんなところに?という場所から発見されたらどうだろうか?まずは驚き、なつかしく嬉しくそれを眺めるかもしれない。しかし誰が?ということを考えたらコワイ気もする。へたすればストーカーまがいの行動ととれなくもない。

そんなアメリは街の中で今度は不思議な忘れ物を見つけた。想像力と、行動力、そして子どものようないたずらな心が備わっているアメリ。置き忘れられたものは、カバン。その中には人の写真をコレクションしたスクラップブックが入っていた。無数な人の無数の写真。アメリは誰が、どんな理由でこの写真をコレクションしているのか知りたくなってしまった。それにそのコレクションの中には何度も何度も同じ人の無表情できちんと撮れた写真が貼ってある。この人は何度もなぜ写真をとっているのだろう。そしてなぜきちんと撮れている写真を捨ててしまうのか?その真相が知りたくてたまらなくなってしまった。突き詰めていくうちにアメリはいろいろな人たちのいろいろな人生をちょっと嬉しくさせるようないたずらを考えて実行したくなったのだ。いたずらは悪いことだと人はいうかもしれないが、それは多少ウソが含まれていたとしても…いたずらには2種類あって悪意満ちたものと、愛情に満ちた(?)ものがあるのだろうと思う。私も幼いころには人を驚かせたくてちょっとしたいたずらをした(もしかしたら今もしているかもしれない)。自分の存在をどこかでアピールしたかったのだろうか。そのいたずらをして人の心を動かすことが楽しくて、アメリもおちゃめないたずらをし続けた。

今の日本では家具付きのアパートなど少ないし、あまり古い建物は残されていない。部屋を変わるときには部屋の中を隅々にまで手をくわえ、前の住人の生活した形跡はのこらないのが普通だろう。アメリのようにふと宝物を発見するようなシーンは残念ながらあまりないような気がする。でもこんな物語が街のどこかで起こったらなんだか嬉しい気がする。なにか嬉しいことがおこるたびに、これは誰の仕業かな?と考えるのも楽しいものだ。(文:やぎ)