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新聞錦絵の世界

高橋克彦/著
角川書店
(角川文庫)
浮世絵といえば美人画、風景画だと思っていたが、著者の高橋克彦さんは新聞錦絵も浮世絵の延長線上に考えている。そもそも浮世絵は美術品として作られていたわけではなく、広告や言葉と一緒になって事件を物語る図版として作られ、見られてきたという。高橋さんは、学生時代に自分の小遣いで買える錦絵を集めはじめて、その再評価する所まできた。新聞錦絵は今日のワイドショーに対応するものだと言う。したがって、新聞錦絵はじきに写真にとってかわられる。本当に短い生命であった。
とにかく、従来の浮世絵観にとらわれず、自由な頭で浮世絵を見直し、いろいろ目を開かせてくれる本である。その昔私は東京日々新聞をごく初期の号から通覧したことがあるが、そのとき目にした紙上の猟奇事件が新聞錦絵の材料になった。
それにしてもこの本で見る新聞錦絵の血なまぐさく、グロテスクなことはどうであろう。(文:宮)