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よるくま |
酒井駒子/作・絵 |
偕成社 |
ある晩、家にクマのこがやってきた。そのこの名前は「よるくま」。目が覚めたらお母さんがいなくて、さみしくなったみたい。お母さんを探すため、ぼくは「よるくま」といっしょに夜の街へでた──。
まるで上質のサイレント映画を観ているような気にさせる不思議な絵本だ。センスがあるなあ、と思う。絵は少し甘すぎるような気もするけれど、お洒落なだけでなくきちんとリアリティをもって描かれている。「ぼく」が「よるくま」を抱きしめるところや、「よるくま」がお母さんを見つけて泣き叫ぶの顔は、子どもを本当によく見ている人の絵だ。そして、仕事だとわかっていても、親において行かれたような気持ちになる子どもの寂しさを、よく理解している人でもある。そのあたりがリアルに胸に迫ってくるので、この絵本を読むと、なんとも切ない気持ちになる。でもときには、そんな感情を思い出させてくれる絵本を読みたくなるのだ。(文:京) |
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