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こんな家にすんだ |
こぐれひでこ/文と絵 |
立風書房 |
私は家が大好きだ。というよりも、住まうということに対してすごく関心を持っている。衣食住は人間にとって切っても切り離せない大切なものだと思う。でも近年の私の一番関心ごとといえば「住」である。
書店で数年前にこの本を手にしたときドキドキした。私は引越魔の家庭に育ったのでいつも新しい家に越していくときのなんとも言えない感覚を味わってきた。寂しい気持ちと新しい気持ち、嬉しい気持ちなどの入り交じった気分である。この本の帯に書かれた文章に目が止まる。埼玉県の築100年の農家づくりの家からパリの築100年のマンションまで…とある。著者はこぐれひでこは現在イラストレ−タ−として活躍している女性である。そういえばよく名前を目にしたことがある気がする。どんな人なのだろうか。懐かしい昔の家々の思い出と間取りに写真や絵が添えてある。私はぐいぐいと本のつぼにひきこまれていく。この本の類書で私がいつも読んでいる雑誌の連載「週刊文春」の中に似たような日本的なかんじの記事がある。「家の履歴書」という連載だ。毎週いろんな人が登場して自分の思いでの家と今の家などを間取り付の文章を掲載している。人の歴史を語るとき家というのはすごく参考になるし興味深い。そしてその時の経済状態…などまで思い出したりするのである。そんなものが見えてくるのが家の歴史。住んだ家を知ることで見えてくる暮らしぶりがあるのだ。人は自立したばかりの若いときからすでに大きな家に住んでいるわけではない。わたしなぞは、結婚して7年目になってもえらく狭いボロ屋に住んでいるままだが、それはそれで不幸なわけではなく、逆に楽しんで暮らしているので、いつか笑って語りわたしもいつか「こんな家に住んだ」って自分のノートでも作ってみたい気がした。
わたしの家の歴史もなかなかのものだが、こぐれさんの家の歴史を見て愕然とした。週刊文春の家の履歴書の中には数件のインパクトに残っている家のみを紹介しているが、これは単行本なのでめいっぱいこぐれさんの家の歴史が語られているのだ。そこが私の探求心を満たした。こんなにもいろいろな家で生きてきたのかあーと思ったら尊敬さえしてしまったのだ。幼少時代を過ごした家、そして学生時代の風呂ナシ生活、そして新婚時代。家は不便が多い家のほうが興味深いものである。そしてパリの現在(?)家。家は手を加えることで愛着のあるものになってゆく。そんな家のもつ楽しさが存分に伝わってくるのではないか。
人に歴史あり。家に歴史ありの楽しめる本である。(文:やぎ) |
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