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 ぼくが犬のあとをつけた夜

ぼくが犬のあとをつけた夜

ニーナ・レイデン/作 加島葵/訳
カワイ出版

〈ぼく〉の家では、犬を一匹飼っている。どこにでもいる普通の犬だけど、ある朝、その犬がタキシードを着こんで、リムジンから降りてくるのを見てしまった。それから〈ぼく〉にとって、びっくりの連続で……。

ペットの私生活って謎だ。たいていのペットは、鎖につながれたり、檻に入れられたりして、プライベートな時間はあまりなさそう。でも、人間たちが寝静まった真夜中になると、鎖がひとりでにはずれて、仲間とつれだって夜の散歩を楽しんでいるのかもしれない。相手が自分の見えないところで何をしているか想像するのは、相手に自分と異なる人格があると認めたうえでのことだから、大切なことだとおもう。それが、相手が動物であっても。それに、見えないということはわからないということなのだから、想像したことが現実じゃないなんて、誰にいえる? そういう想像をつきつめたのが、この絵本である。ダンディーなゴールデンレトリーバーやセクシーなプードルたちが繰り広げるドッグ・ワールドが、妙に人間くさくて楽しい。また、イラストをまじえた手書きの文字も凝っている。

私の家に犬がいたら、この絵本をよんだあと、きっと夜中に犬小屋のなかをのぞいてしまうだろう。犬好きな人にとくにおすすめの一冊。(文:京)