この本は忌野清志郎が自分の交友録を語った、1987年に刊行されたエッセイ集です。当時の忌野清志郎よりも今現在の忌野清志郎の方が私にとってはリアルタイムなのですが、12年前の彼の言葉が何の違和感もなく、受け入れられるのは、彼自身昔から変わらず一本筋の通った人だからだと思います。
さて、本の内容もこれまた彼らしく、誉めるだけではなく、けなすし、暴露話もするが、文章の端々に愛情があふれている…そういう、紹介のしかたです。ふつう、自分の友達のことを誰かに伝えるとき、なかなか正確には伝えらず、仲間内ではおもしろい出来事も、案外わかってもらえなかったりするものです。そこは、忌野清志郎の持っているキャラクターのせいか、それとも周りにいる人たちが特異なキャラクターなのか…とにかく、よくもこれだけ身の回りでおもしろいことが起こるものだ感心しつつ、まるで自分もその人のことを知っている様に感じてしまうから不思議です。
もともと、ミュージシャンとして、言葉の使い方が非常におもしろい人だし、外国のミュージシャンの曲をカバーするときの翻訳も(カバーする時の)とても上手いので、言葉を操ることに関して飛び抜けた才能を持っているのだとは思います。
もしこれを機会にこの本を読む人には、ちょっとしたネタばらしになってしまいますが、どうしてもこの愉快な話だけは多くの人と共有したいと思うので本書から抜粋して書かせていただきます。
『泉ちゃん(泉谷しげる)は、怒るのが好きだ。だいたい何に対しても怒りをぶちまけているんだけど、昔は、コンサートの主催者や関係者に気に入らないところがあるとあの調子で「バカヤロウ」を連発し、ライブの途中で帰っちゃうこともあった。いつだったか仕事が一緒だった時、例によってコンサートの関係者にどなりちらして、「バカヤロウ、もう、おまえたちとはカナワサイ、仕事はしないからな」と、わけのわかんないことを言った。とにかくそのイキオイがスゴいんで、不思議に思ったが誰も口には出さなかった。よくよく考えてみると、カナワサイとはコンリンザイ(金輪際)のことだったんだ。なんて無知なヤツなんだ。』
ネガティブな気分も、吹っ飛ばす「忌野旅日記」絶対お勧めです。(みなりん) |