「この本おもしろかったよ!」
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骨董市で家を買う

骨董市で家を買う

服部 真澄/著
中央公論社

ミステリーにも、日本の作家の本にも、どちらかというと興味の薄い私は、服部真澄が一体誰なのか浮かんでこなかった。(ちなみに彼女は処女作『龍の契り』がベストセラーとなった作家さんらしいです。)知り合いからすごく面白かったよ「なんてったって骨董屋で家を買っちゃう時代なんだから」とわけのわからない言葉に、「そうかその人って作家の人なんだあ」と思ったのだった。

そんなこんなするうちに、私は「家」について興味を持つようになり、書店へ家関係の本を探しに足を運ぶようになった。その時に積んであったのが、この本だった。なんだか表紙からして好きになり、よくよくみたら、知り合いが勧めていた本じゃないかということに気づき、ほか数冊の本と共に購入するに至った。

この本は本当に服部真澄が、骨董市で古民家を買い、移築するまでのお話なのだが、読むうちに服部真澄って男だったのかと(薫とか真澄って男の名前でもあるんだけれどどっちかというと女のイメージを抱いてしまう私だったりする)何の知識もない私は、すっかり騙されてしまった(実はやっぱり女の人だった)。最後までずっと。だってこの本、旦那さんの目から見た妻の様子のように客観的に書いてあるんだもん。

ただ単に古い家を移築するのは簡単そうに思っていた。しかし古い家がそのまま移動するだけで住める家になるわけは無いのである。何年も人が住まなくなった家は傷みが激しくそのままではとても住めない。けれども、昔の家のいいところは、日本の風土に適して、くらしやすく、ものによっては今は、とても手に入りそうもない素材に出会ったりするのである。まっすぐに加工された木ばかりでなくその曲がった木をそのままの形で家造りに使っていたりする。確かに味があっていいなあと私などは思ってしまうが、大工さんにいわせると手のかかる仕事らしい。今は真っ直ぐな木、真っ直ぐな材木、決められた形の家の大量生産のほうが時間もかからないのだから。

昔の囲炉裏を囲む生活は、寒い冬に、一家が一カ所に集まっているという団らんの情景が浮かぶ。藁葺きの屋根の高い天井から水蒸気を逃がし、高温多湿の日本にぴったりの家だったのかもしれない。古民家自体は、家としては破格の買い物だったかもしれないけれど、その素材を生かすべく、今の生活にあわせた家を建てたのにかかった値段は結局はそう安くはならなかったと書いていた。

こんなに世の中が発展してもなお、昔のひとの知恵はすごいなあと思わずにはいられない。漆喰の壁1つこさえるにしても、そういった職人がいなくなってきていている。職人さんと呼ばれる人が、これからも受け継がれて生き続けてほしいと思った。素材も職人も減るからいい仕事も安く気軽に頼めるのではないだろうか。とにかく素直に騙されて楽しく読んでしまいました。(文:やぎ)